活動報告

ワーキング・サバイバーズフォーラムを開催しました

 ピンクリボンウオークに先立ち、「ワーキングサバイバーズフォーラムかがわ」(主催・香川県、ピンクリボンかがわ県協議会)を開催。「がんになっても働き続けるために」と題してがん経験者の就労・雇用問題に焦点を当て、基調講演やパネルディスカッションが行われました。

基調講演

 1984年11月、39歳という働き盛りに勤務地ニューヨークで大腸がんが発覚。86年の再発と肝転移、肺転移を経て、90年までに6回の手術を経験しました。その間、狭心症や急性心筋梗塞で心臓手術も受け、死も覚悟しましたが、幸い再発することなく今に至っています。
 大腸がんの手術後「再発のリスクが高く、5年生存率は20%」と言われ、死が目前に感じられました。検診に行っていなかったことを大変悔やみましたが、正面から立ち向かうしかない。人生をどう生きるか、死ぬまでに何をするかという覚悟ができたように思います。
 転移を繰り返し、手術4回目ともなると「もういいじゃないか」と思った時もありましたが、手術ができるのはむしろ幸運だと思い直しました。大切なのは主治医といい関係を築くこと。質問は患者の権利であり、患者が自身の状態を把握し、医師と相互理解を深めることが肝心です。
 最初の手術後、米国人の主治医に「がんは安静にしていれば転移・再発しない病ではない。アクティブに動く方がいい」と言われ、友人のジャーナリスト・千葉敦子さんにも「残された日を本当に大切に」と叱咤(しった)激励されて、職場の理解を得て仕事を続けました。がんは治療とともに「どう生きるか」が重要です。がんを経験した人、特に若者は、仕事の意味や価値を考えてほしい。社会に貢献してこその生きがいです。
 欧米では専門性が正当に評価され、ハンディを負っても技能を生かして働ける環境が整っています。一つの会社にのみ通用するノウハウで年功とともに昇進していく日本の雇用システムは成り立たず、変革が必要。がんを患ってもしっかり働ける「プロフェッショナル」になることが大切です。
 人生は有限、一期一会。悔いなく生きるために、良き人間関係を持つことがいかに大切かにも気付きました。いい人生を送っていれば闘病ができる。医学は日進月歩です。決してあきらめず、希望を持ち続けてください。

パネスディスカッション

【企業におけるがん対策】
 第2部のパネルディスカッションでは、高松赤十字病院の吉澤潔副院長をコーディネーターに、第1部の講師関原さんをコメンテーターに迎えて「企業におけるがん対策」を話し合いました。
 就労者の50%ががん経験者になる時代。県内でがんにかかった就労者の約8割が職場に報告(全国平均は75%)。うち約56%が仕事を継続しているものの、約19%は転・退職、廃業しているのが実情です。
 厚労省のがん対策推進基本計画に、働く世代や小児へのがん対策の充実が追加されたことを踏まえ、県健康福祉総務課の土岐敦史課長は「早期発見・検診の大切さ、相談体制の充実、患者理解のための啓発活動」など県の施策を説明。香川大学医学部・臼杵尚志病院教授は「職場と患者の日頃の良好なコミュニケーションが大切」、香川経済同友会・竹内麗子副代表幹事は、サバイバー(がん経験者)を戦力として起用する視点を提起しました。(株)成光社の稲毛恵美子取締役副社長は、がん経験者の家族として、闘病を支える側の苦労と周囲のサポートの必要性に加え、職場復帰の受け入れ体制にも言及。意見を交わす中で、「職場・地域・医療」のコミュニケーション場としての検診の大切さが浮き彫りになりました。

【コーディネーター】吉澤 潔氏(高松赤十字病院副院長、ピンクリボンかがわ県協議会メディカルネット主宰)
【コメンテーター】関原 健夫氏(日本対がん協会常務理事、楽天銀行(株)取締役)
【パネリスト】竹内 麗子氏(香川経済同友会副代表幹事・ライオンズクラブ国際協会336A地区健康福祉委員長)
       臼杵 尚志氏(香川大学医学部病院教授)
       稲毛恵美子氏((株)成光社取締役副社長)
       土岐 敦史氏(香川県健康福祉総務課課長)
【総合司会】法村 尚子氏(高松赤十字病院乳腺外科)

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